第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
ニーナはイルヴィスに向けて一つうなずき、自嘲気味に笑った。
「そりゃそうですよね。諸々が終わった後に事実を言ったって、一メイドの──それも卑しい身分の出であるあたしの言葉なんて、誰も耳を貸したりしませんから。別に対価なんて渡す必要なんてない」
だから、今この場で真実を言うことにしました。ニーナはそう言うと、また頭を下げた。
先ほどまでアリシアに向けられていた人々の侮蔑の視線は、今はサラたちに向いている。
イルヴィスは「そうか」と軽くうなずいた。
「その辺の話は、他の買収されたというメイドたちからも聞かなくてはならないな」
目を向けられた五人のメイドたちは、顔を見合わせる。そして、「し、失礼します」と引きつった声で言ってから走り去って行った。
あっという間に見えなくなった彼女たちの走って行った方を見ながら、イルヴィスは呆れたように息をつく。
「話を聞くまでもなかったか。ローラン公爵」
「は、はい」
「貴方が娘を私の妃にさせたがっていることは知っていた。だが、そのために決まった婚約者を引きずり下ろすような真似をするとはな」
「ご、誤解でございます殿下」
「何が誤解だ?」