第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
イルヴィスの声は、背筋が冷えるほど冷たい。
「アリシアは今回のことを本気で気に病んでいた。本当に自分のせいで一人の人間が死にかけたのかもしれない、と」
「っ……も、申し訳ございません」
「謝罪の相手は私ではない」
公爵は、はたから見てもわかるくらい強く唇を噛みつつアリシアの方を向き、ゆっくり近づいてきた。
そして躊躇いながら頭を下げた。
「申し訳なかった」
公爵の頭頂部は間近で見ると意外に薄いな。そんな余計なことを考えていると、イルヴィスはニヤリとイタズラっぽく笑い、アリシアを見た。
「どうする、許すか?アリシア」
「ええ」
アリシアもイルヴィスに向け、同じように笑い返した。
「もちろん、許しますわ」
アリシアはテーブルに置いてある、先ほどニーナに味見をさせたお茶の入ったポットを手に取る。
優雅な手つきで、そのお茶を二人分のティーカップに注ぐ。
「和解の印のお茶です。サラ様もどうぞ。一気に飲み干してくださいね。その方が香りが感じられますから」
「はあ!?何でわたくしが……」
サラは眉をひそめたが、自分が断ることのできる立場でないと悟ったのか、渋々ティーカップを受け取った。