第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 そこで、故意に噂を流したのだ。

 第一王子と婚約者の仲は芳しいものではなく、王子は新たな妃候補を探している。


 そんな噂を流すに当たっては、(セシリア)に協力してもらった。セシリアは騎士団副団長の妻という立場なので顔が広く、噂はアリシアの期待以上に広まった。


 結果あれだけの人数が集まり、ローラン父娘もきちんと参加していた。

 あとはあの日の通りだ。

 アリシアは繰り広げられる会話やタイミングについても細かく練っており、概ねその通りに事が進んだ。

 一介のメイドであるニーナの証言でも、イルヴィスが聞き入れる姿勢を見せれば貴族たちも(ないがし)ろにはしない。

 あまりに上手くいくものだから、こっそり笑いを堪えていたのは内緒だ。


 余談だが、ローラン家は近年かなりまずい経済状況だったらしい。あれこれ誤魔化していたものの、領地の民からの評判も悪かったようだ。

 イルヴィスに恋慕していたサラだけでなく、ローラン家全体が家の存続のために王家との繋がりを強く望んでいた。

 しかしながら、今回の件で他の家からは総スカンを食らったようで、これからどうなっていくのかは不明である。



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