第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
いつもより少しだけ時間をかけて身だしなみを整えたアリシアは、王城に到着して久しぶりに執務室を訪ねた。
しかし今日は、すっかり顔なじみになった番人に入るのを止められてしまった。
「数日溜め込んだ書類で部屋はアリシア様をお通しできる状態ではないそうです。ある程度仕事を片付けるまで客間で待っていて欲しいとのことです」
書類が溜め込まれているのはどう考えても、あのお茶会を初めとするアリシアの計画諸々に時間を割いていたからだろう。
アリシアはかなりの罪悪感を覚えつつ、王宮の豪勢な客間へ足を踏み入れ、ソファーに腰掛けた。
確か、婚約の申し出を受けて最初にイルヴィスと対面したのもこの部屋だった。
あの頃は、自分が目の前の婚約者と仲良くなり、ティータイムを心待ちにするようになるなんて思いもしなかった。
イルヴィスは仕事に区切りを付けるのにどれくらいかかるだろう。お湯は冷めてしまうだろうから温め直さなければ。客間が給湯室に近くて良かった。
そんなことを考えているうちに、ソファーの柔らかな座り心地も手伝って、強い睡魔が襲ってきた。
(少しうとうとするくらいなら構わないわよね)
イルヴィスが部屋に入ってくれば気が付くだろう。アリシアはふあっと一つあくびをして目を閉じた。