第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



 机に積み上げられた書類を一山分片付けてから、イルヴィスは執務室を出て客間へ向かった。

 アリシアが来たと聞いてすぐ彼女の元へ行こうとしたのだが、溜め込んだ仕事をある程度片付けるまでは部屋を出さないとばかりに従者に見張られていたのだから仕方がない。



「アリシア、遅くなっ……」



 客間の戸を開き、中を見たイルヴィスは思わず出しかけた声を飲み込んだ。

 アリシアが、ソファーの背もたれにもたれかかりながら軽く俯き眠っていた。



(疲れが溜まっているんだな。まあ無理もない)



 ここ数日、自分の無実の証明とローラン家への牽制、それからちょっとした(?)仕返しのために、情報集めから計画実行まで休む間もなく動き回っていた。


 ソファーの上だというのに、イルヴィスが歩み寄り、隣に座ってみても全く目を覚ます気配がないほどぐっすり眠っている。

 小声で名前を呼んでみても気づかない。



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