第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
庭園が綺麗すぎてテンションが上がったあげく、迷子になった伯爵令嬢17歳はちょっと格好悪い。それにノアも心配しているだろう。
来た道を戻ろうと思ったが、そもそも来た道が分からない。どうするのが正解かと悩んでいると、少し遠くの方にガラス張りの建物のようなものがあるのに気がついた。
(あれは……温室?)
アリシアはつい今まで悩んでいたのを忘れ、温室らしき建物の方へと歩く。
その建物のある一画は、他と少し雰囲気が異なっていた。
華やかな見た目の花が少なく、その代わりに、地味だが芳しい香りがする、実用的なハーブや薬草がたくさん茂っている。
(なるほど、ここの一画はハーブ園なのね)
もしこの瞬間のアリシアを見ていた人物がいれば、その人物はきっと「獲物を見つけた狼のような目をしていた」と語るだろう。
口もとにニンマリと弧を描いたアリシアは、今までにも増してじっくりと周りを観察する。温室の扉も押してみるとあっさりと開いたので、迷いなく足を踏み入れた。
「レモングラスにタイム、カモミールもある!」
多種のハーブが、きっちりと整理されて植えられている。その中にハーブティーに使えるものがいくつもあり、見つけては心が踊る。