第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
そのうちの一席にいた二人組の女性のうち、一人がドアのベルに反応して振り返り、笑顔を見せた。
「いらっしゃいませ〜。お好きな席へどうぞ〜」
とりあえず紅茶を一杯だけ注文すると、その女性は立ち上がり、カウンターの奥へ消えていく。残されたもう一人の女は新しく来た客を気にする様子もなく、テーブルの上に並べられたものを真剣な表情で眺めていた。
並べられているのはいくつものティーポットだった。
イルヴィスは何となく、彼女のいるテーブルの隣のテーブルに着いた。
真剣にティーポットを眺める彼女は、近くで見るとまだ13か14くらいの少女だった。
ティーポットに入った紅茶をカップに移し、ちょっと首をかしげると、また別のポットに茶葉を入れ抽出を始めた。
この少女は客ではないのだろうか。迷った末に、イルヴィスは少女に話しかけた。
「君はこの店の店員なのか?どうして先ほどからいくつも紅茶を淹れているんだ?」
突然声を掛けられた少女はビクリと肩を震わせ、イルヴィスの方を向いた。
パッチリと開いた丸い瞳に薄い桃色の唇。無造作にまとめられた髪は、緑と青が混ざったような少し珍しい色をしている。