第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 唇に触れる、温かくて柔らかい知らない感触に、アリシアの思考はしばらく停止する。


 やがてそっと顔を離したイルヴィスが、頬をほんのり赤く染め、照れたように手を口許にやり目をそらす。


 見たことがない彼のそんな表情に、アリシアはたった今起きた出来事を理解した。



(えっと……今、もしかして)



 顔の熱と鼓動の速さが、信じられないくらい高まっていく。


 そっと、手で自分の唇に触れてみる。



 不思議と、まだ飲んでいないはずのラベンダーティーが、ふんわりと香るような気がした。



-fin-
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