第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



 それならばミハイルとはそこまで親しくならないのが正解かもしれない。

 そうは思ったが、彼がこの美しい庭園を管理している一人なのだと思うと、好奇心が抑えられなかった。



「あの、ミハイル様」


「呼び捨てで構いません。貴女の方がずっと身分が上です、アリシア様」


「えっと……ではミハイルさんで。この温室のハーブもミハイルさんが管理されているんですか?」


「ええ。お気に召しましたか?」


「はいっ!すごく素敵で、管理も行き届いていて……奥も見ていいですか?」


「どうぞご自由に」



 淡々とした口調で話す人だ。イルヴィスに劣らず冷たい感じがする。



「お茶を淹れましょうか」


「いえ、お構いなく」


「先ほど摘んだばかりのレモングラスで、フレッシュハーブティーを淹れますよ」


「本当ですか!?」



 いや、やっぱり良い人なのかもしれない。アリシアはレモングラスのフレッシュハーブティーに釣られて、あっさりミハイルへの印象を変える。

 フレッシュハーブティーというのは、乾燥させたハーブを使うハーブティーとは異なり、摘んだばかりのハーブをそのまま使うもののことである。ハーブを生のまま保つのは難しいため、フレッシュハーブティーが飲めるのは育てている人の特権だ。


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