第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 アリシアはガラスのポットを準備するミハイルを手伝おうとすると、やんわりと止められた。



「アリシア様は温室内をご見学なさっていても構いません。ハーブティーは淹れておきます」


「いいえ、ハーブティーやお茶は淹れる時間を含めて楽しまなくてはもったいないです。あ……迷惑ですか?」


「……いえ。貴女がそうおっしゃるならご自由に」



 ミハイルは淡々としたトーンで答える。アリシアへの関心は薄いのだろう。


 アリシアは採れたてだというレモングラスの葉を洗い、数本の葉を細かくちぎって、温められたガラスのティーポットに入れる。ポットに湯を注ぐと、ふわりと湯気が立った。

 レモングラス。見た目はただの巨大な草のようだが、その名の通り爽やかなレモンの香りがする。料理にも使えるし、虫除けにもなる、とても優秀なハーブだ。



「よし、これで数分蒸らして、と。……ミハイルさん?」



 ポットに蓋をし、一通りの作業を終わらせて前を向くと、ミハイルがじっとアリシアのことを見ていた。

 目が合うと、ハッとしたように口を開く。



「いえ……貴族のご令嬢がこれほど手際よく茶を淹れることができるのに驚いて」


「ああ……まあ、わたしの場合はそれが趣味なので」



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