第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 誤魔化すように笑うアリシアを見たミハイルは、左手でこめかみの辺りを押さえながら溜息をついた。


 アリシアだって、イルヴィスに挨拶くらいはしなくてはと思っている。これでも一応謁見を申し込んだことはある。しかし、第一王子である彼は多忙を極めるとかで、なかなか会う許可がおりないのだ。

 
 まあ、そのうち面倒になってその申し込みすらしなくなったのも確かだ。気まずくなったアリシアは、話題を逸らそうとハーブティーに目をやって言う。



「ほら、タイムティー。そろそろ良いんじゃないですかね」


「誤魔化しましたねアリシア様」


「……ほら、いい香りがしてきました」


「……」



 ミハイルは無言でポットの中身をカップに注いだ。そのカップを手渡した後も特に何も言わなかったので、アリシアは少しほっとしてタイムティーをすすった。


 タイムは独特の苦味と刺激が舌を刺す。アリシアは割と好んで飲むのだが、万人受けする味ではない。だから人に振る舞う時は他のハーブとブレンドすることも多い。



(ブレンドするなら……やっぱり1番合うのはミントかしら)


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