第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 サッパリと清涼感のあるミントには多くの種類がある。甘めの香りのするスペアミントやアップルミントも良いが、効果の面から見ても、タイムのブレンドにはメントールの香りが強いペパーミントが一番ではなかろうか。



(あれ、そういえば)



 アリシアはふと気になって温室内を見渡す。カモミールやローズマリーを初めとする定番のハーブはあらかた揃っているのだが……



「このハーブ園、ミントはないのですか?」


「え?」


「こんなに種類豊富なハーブがあるのに、どこにもミントが見当たらないな、と思いまして……」



 アリシアが言い終わらないうちに、ミハイルは音を立ててカップを置いた。そして勢いよく立ち上がる。

 彼の突然の行動に困惑の色を浮かべるアリシアに、ミハイルは告げた。



「付いてきてもらえますか」


「え、はい!ちょっも待って……」



 急いで残りのタイムティーを飲み干す。一気に飲むとさすがにうっとなる。
 ミハイルは無理して飲まなくていいのにと呟いていたが、そんなもったいないことはできないし、言うタイミングが遅い。


 ミハイルはアリシアが立ち上がったのを確認してから歩き出した。温室を出て、ハーブ園になっている一画よりもさらに奥へ行く。


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