第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
結果、その日のうちに、辺りいっぱいに蔓延っていたペパーミントは、ほとんど姿を消した。
引き抜いたミントを全て干したところで、ミハイルがお茶を運んできた。
「お二人とも、お疲れ様です。本当に助かりました」
お茶はミントのハーブティーだった。さすがに摘んだばかりのものではなく、保存してあったものを使ったらしい。
ノアは遠慮していたが、疲労のためかミントの爽やかな香りに抗えず、ティーカップに口を付けた。
「とても美味しいです。さっぱりしていて」
「でしょ?ミハイルさんが淹れるお茶はいつも美味しいの!
ミントは疲労回復効果もあるし、なんだか気分がスッキリするわよね」
ミントには疲労回復効果の他にも、集中力がアップしたり、リラックスできたりするといった効果もある。
(疲労回復にリラックス、か)
アリシアはペパーミントの効能を思い出しながら、ふとある人物が頭に浮かんだ。
膨大な量の執務により、婚約者に会う時間もないほど多忙な男。優秀な人間だとは聞くが、その分疲れが溜まっているのではなかろうか。
「ねえ、ミハイルさん……」
アリシアは少しばかり迷ったあげく、口を開いた。
「イルヴィス殿下のお茶係は、どこにいるのかしら」