第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「お初にお目にかかります、アリシア様」
「初めまして、副メイド長さん。お茶の準備はもう終わってしまいましたか?」
「……?いえ、今始めようとしたところでございますが」
挨拶もそこそこに尋ねると、副メイド長は訝しげな顔で見返してきた。アリシアはそれに気づかないふりをしてさらに聞く。
「茶葉はいつも何を?」
「茶葉ですか?……ええと」
副メイド長は部屋の奥にある大きな戸棚を開けた。その中には、何種類もの茶葉や茶道具がしまわれている。
「普段はこのダージリンティーをお淹れしております」
見せてきたのは、ラベルが貼られた瓶に入った茶葉。蓋を開けると豊かな香りが鼻腔をくすぐる。さすがに上等な物だ。
「なるほど。ところで、普段イルヴィス様にハーブティーをお淹れすることはありませんか?」
「ハーブティー、でございますか?」
副メイド長は、すぐに首を振った。
「ありません。ハーブティーというのは薬の類いでございましょう?あまり味が良いものではございませんから……」
そう、実はハーブティーというものはそういう認識が強い。前世では味を楽しむことも一般的だったが、この世界では薬として飲まれることしかないと言って良い。