第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「すみません。いただきます」
アリシアはカップを受け取った2人の反応を少し緊張しながら見る。
副メイド長は恐る恐る匂いをかぎ、ゆっくり口をつけた。すると、彼女の目がじわりと開き、驚いたようにアリシアの方を向いた。
「とても──おいしゅうございます」
アリシアはその言葉を聞いて胸を撫で下ろす。彼女の口に合わなければ、イルヴィスにミントのハーブティーを飲んでもらいたいという計画が完全にダメになるところだった。
「僕も美味しいと思います。風味はずいぶんと違う印象ですが、ダージリンの味自体はしっかり残っている」
ミハイルもあごを軽く撫でながらうなずいた。
「イルヴィス王子はお茶にこだわる方ではないでしょうが、たまには少し違ったものを出しても、確かに喜ばれるのでは?」
彼は今度は副メイド長に向けて言った。
よく知らないが、ミハイルは王宮仕えの中では上の地位にいるのだろうか。副メイド長はミハイルに言われたことで、渋々ながらといった感じで目を伏せた。
「殿下がお気に召すかは分かりませんので、普通のものも用意いたします。それで良いなら、ミントのブレンドティー、お出ししましょう」