第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「はい。アリシア様には、自分の名は出さないで欲しいと言われたのですが……よくお分かりになりましたね」
「……」
イルヴィスは口元に微笑を浮かべて、不思議がる彼女を下がらせた。それから、入れ替わりに側近を呼んだ。
「アリシアはどのくらいの頻度で城に来ている?」
「記録を見ますと、ほぼ毎日来ているようですね」
「毎日……?城内で見かけたことはないが」
「以前2、3度謁見の申し込みがありました。しかしその頃はちょうど他国の使節が来たりと殿下もお忙しい時だったために、断ったのですが……」
諦めたのか、その後はイルヴィスに会いたいという申し出はないらしい。それでも王宮への出入り自由という特権があるからか、ほぼ毎日訪れてはいるそうだ。
「はは。あの女らしい……」
つい堪えられずに笑い出す。
「まだ帰っていないようでしたら、呼びますか」
「いや、構わん」
イルヴィスは立ち上がり、まとめていた髪を解いた。
「私から会いにいこう。王宮内で、彼女が毎日入り浸るほどに気に入りそうな場所は想像がつく」