第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



(タイムの他には…ローズマリー、レモンバーム……あ、カモミールもいいわね)



 温室で、アリシアは鼻歌でも歌い出しそうなくらいに嫌良くハーブを摘み取っていた。


 大量につくったドライミントは分けてもらえると言われたので、ミハイルの許可を得て、ミントとブレンドできそうなハーブを集めているのだ。



(ミハイルさんとノア、遅いわね。どこまで散歩しに行っているのかしら)



 アリシアは手を止めて汗をぬぐう。

 ミハイルは先ほど、まだ庭園に慣れていないノアのため、周辺を案内しに行くと言って出ていったのだが、なかなか戻ってくる気配がない。



(実は二人、すごく仲良くなってるかも。お互いの身の上を話すうちに一気に距離が縮まって恋に発展……なんてことがあったりして)



 前世から受け継いだ生粋の少女漫画脳でそんな想像をする。

 自分が恋することは今ひとつピンとこないアリシアだが、他人の恋模様を想像するのは大好きだ。



 温室の入口辺りに、誰かの気配がした。恐らく二人が戻ってきたのだろう。



「お帰りなさい!庭園の散策はどうだっ……た……」



 言いながら振り返り、途中で言葉を失った。だがそれは無理もなかろう。


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