第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「ペパーミントのブレンドティー。あれは貴女の案だそうだな」
「ああ、はい……副メイド長にお願いして淹れてもらいました」
(やっぱりその話題なのね……副メイド長は黙っていてくれるって言ってたはずなんだけど……)
もしも問い詰められたら答えないわけにはいかないだろうし、彼女を責めることはできない。
だが、問い詰められたらのだとしたらそれが意味するのは……
「もしかして……お口に合いませんでしたか?」
こんな不味い茶を淹れたのは何故か。アリシア様にそうするよう命じられて……。そんな会話が目に浮かぶ。
だが予想に反して、イルヴィスは優しさを帯びた声で言った。
「いいや。いつもの紅茶と一味違って面白かった」
「すみませ……え、面白かった?」
「ああ。しかし驚きだ。今どきの伯爵令嬢は自分で考えてブレンドした茶を淹れることができるのだな」
「……じ、自分で淹れたわけでは」
とりあえず否定してみるが、何となくそんな嘘は通用しないような気がする。
案の定イルヴィスは、わざとらしく肩をすくめた。
「そうか。私はてっきり副メイド長に茶の専門知識を持っていることを認められ、代わりに淹れるよう頼まれたのを断れなかったのかと思ったが」