第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


(何でそこまで分かるのよ)



 あの副メイド長がそこまでおしゃべりだとは思えないので、きっと推測なのだろう。だが勘が鋭いというレベルではない。


 気がつくと、イルヴィスとの距離がかなり近くなっていた。背はアリシアの方が低いので、自然と見下ろされる形になる。

 婚約者としては別に不自然な距離でもないのだろうが、威圧感がすごい。アリシアは思わず後ずさりそうになるのを必死に堪える。



「それで、本当のところはどうなんだ?」


「本当のところ、とおっしゃいますと?」


「だから本当に貴女はあの紅茶を自分で淹れたわけではないのか?」



 そんなにこだわる必要のあるところなのだろうか。というか、どうせアリシアが嘘をついていたことは分かっているのだろう。



(ならまあ、嘘をつき通す必要はないか)



 今まで無意識にそらしていた目を、まっすぐイルヴィスへ向ける。

 ばっちりと合った緑色の瞳の視線は、まるでずっとアリシアのことを見ていたかのようにしっかりと注がれていた。



(本当に綺麗な瞳……前世で読んだ漫画は、ほとんど白黒だったけれど、すっごくもったいなかったのね)


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