第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 高熱にうなされている間、少し眠るたび夢を見た。いや、夢にしてはかなり生々しく、どちらかといえば忘れ去られた大昔の記憶が流れ込んできているような感じだった。

 だがそのうちに、その記憶は「アリシア」のものではないと分かった。


 その記憶は、アリシアの前世のもの。

 熱がひいた頃、アリシアなほぼ完全に前世の記憶を取り戻していた。



 アリシアの前世は、日本人の女の子だった。享年17歳。

 生まれつき病弱だった“彼女”は、その短い人生の大半を病院で過ごした。

 入院を繰り返していたため、満足に学校へも行けず、仲の良い友達もいない。唯一の心の拠り所が、母が持ってきてくれる大量の小説や漫画だった。


 物語の中にいる間、“彼女”は自由だった。時には世界を旅し、またある時には魔法を使う。難解な事件に巻き込まれることもあれば、平和な日常を送ることも。


 色々なジャンルの物語を楽しんだが、“彼女”がとりわけ気に入っていたのは、学校が舞台の恋愛ものだ。


 誰かのことを、その人のことしか考えられなくなるぐらいまで好きになる。それはすごく幸せなことのように感じた。

 すれ違うことはあっても、お互いが想いあっているから、後でさらに強い絆で結ばれる。恋愛とは、何て素敵なものだろう。


 自分に縁がないものだが“彼女”は強く憧れた。


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