第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



「だって、ソフィアさんみたいに、こんなに若くて綺麗な人を母だなんて…」


「そうですわ。何なら姉さんよりも姉のよう」


「レミリア、それはどういう意味かしら?」



 息が合っていたかと思えばまた言い合いを始める二人に、ソフィアは微笑ましそうに目を細めた。



「まあまあ二人とも。アリシアちゃんがハーブティーを淹れてくれるそうだから、一緒に飲みましょう」



 アリシアは苦笑いしてティーポットにお湯を注いだ。


 リアンノーズ家にドロドロした関係は皆無だ。

 母親違いの二人の姉は、少しばかり歳の離れた妹を溺愛し、義母を心から慕っている。



 つまり、アリシア・リアンノーズという人間は、「愛されることが当たり前」な環境で育ったのだ。

 とことん愛され甘やかされ……そんな少女が国の第一王子に嫁ぎ、愛されないことに絶望する。その一方で自分より不幸そうに見えた、身分も低い主人公が幸せそうに恋愛している。

 彼女が狂うのもうなずけるな──と、前世の記憶を持つアリシアは分析する。



「今日はローズティーを用意しました。しばらく蒸らしますので、少しお待ちくださいね」



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