第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「あの時私は身分を伏せていたからな。それに、私が王子だと知ったところで、自分の興味のある話以外はろくに聞かなさそうな女だった」
「女……」
前世の少女漫画脳を受け継ぐアリシアは、少しピンとくるものがあり、ニヤリと笑みを浮かべる。
「では、その女性が殿下の初恋のお相手ですか?」
イルヴィスは一瞬目を丸くして驚いたような顔をして見えたが、すぐにその表情は戻り、アリシアに対抗するかのように口元だけ笑みを浮かべた。
「さあな。ご想像にお任せしよう」
この言い方からだと、正解とも不正解とも受け取れる。
(なんだ面白くない)
自分の婚約者の初恋話を聞いて面白がるのもどうかと思うが、イルヴィスのような男が好意を寄せるような人物については純粋に興味がある。
漫画を読んだ限りでは、恋愛感情を抱かないタイプとも感じられた。だが、そういうわけではないとしたら、いったい相手はどのような人なのだろう。
(やっぱり主人公みたいな人、かな)
そんなことを思った瞬間、アリシアの頭に午前中にされた姉の話がよみがえる。
(主人公はこの王宮内のどこかにいるのよね……会いたくないな……)
そう思うと自然とため息がこぼれてしまった。
「どうかしたか?」
「いえ、何でも」