第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 とうとう我慢が限界に達し、アリシアはロベルトの手を自分の手でキュッとつかんで頬から離した。



「ロベルト殿下。自分の兄の婚約者にそう易々と触れるのはおやめください」


「おいおい、そうつれないことを言わないでくれ。俺とアリシア嬢の仲だろう?」


「誤解を招くような物言いをしないでください。わたしと殿下は同じ学園に通っていた時だって、そこまで親しくしてはなかったように思いますが?」


「はは、冗談の通じない女だな」


「ご用が無いようなら、失礼いたしますね」



 一刻も早くこの男(ロベルト)の前から去りたい。庭園のハーブを見て癒されたい。


 そのような思いで、作り笑いを崩さないまま立ち去ろうとした。



「まあ、そう()かなくても良いじゃないか」


「……」



 だがあっさりと呼び止められてしまい、泣きたくなる。



「……まだ何か」



勘弁してくれという気持ちをめいっぱい滲ませて言った。だが、ロベルトが続けた言葉は少々意外なものだった。



「ハーブティーを飲ませてもらいたい」


「え?」


「兄上に出したのと同じもので構わない。アリシア嬢の淹れるハーブティーは、学園でも評判だったからな」


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