第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



 ハーブ園へ向かう途中の小道には、白くて小さい花が大量に咲き誇っていた。

 名前が分からない花だが、可愛らしく、焦っていた心が少しばかり鎮まるような気がした。



(何という花なのかしら。また本で調べてみよう)



 ふっと微笑みをこぼした時、突如頭に電撃が走る。



(白くて、小さい……花?)



 あっ、と大きな声で叫びそうになり、慌てて口を押さえる。

 そしてそのままミハイルがいるであろう温室へと駆け出した。

 走る勢いで砂ぼこりが舞い上がり、ドレスのすそが汚れるが、気にしていられない。



「ミハイルさんっ……!」



 温室の戸の向こうにいたミハイルは、アリシアの姿を確認すると、クイっとメガネを押し上げた。



「アリシア様、どうしたのです?そんなに慌てて」


「エルダーフラワーよ!」


「……エルダーフラワーがどうかしました?」


「マスカットが使えないなら、エルダーフラワーを使えば良いのよ!」



 頬を紅潮させて訴えるアリシアに、ミハイルは椅子を勧めてきた。

 座ったことで少し冷静になり、アリシアはロベルトにハーブティーを出さなければいけなくなったことを説明する。


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