第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
「なるほど。だからエルダーフラワーを、というわけですか」
「そうなの。ミハイルさんならエルダーフラワーも保存してあるのではないかと思って」
エルダーフラワー。低木に白く小さい花を咲かせ、黒い実がなる植物。
葉や、熟しきっていない果実や種子には毒があったりと、扱いに注意が必要なハーブだ。だが、熟した実や花には風邪予防や美肌などに効果がある。
そして、大きな特徴の一つ。エルダーフラワーの花は、マスカットのような香りがする。
香りだけでなく、風味も近いものがあり、きっと気に入ってもらえるに違いない。
「はい、もちろんありますよ。アリシア様のためならいくらでもお分けしましょう」
「わあ!ありがとうございます!」
「それにしても……」
ミハイルはどこか困ったように空を仰ぐ。
「ロベルト王子のためにここまで真剣に考え込んだりして……。これはイルヴィス王子の機嫌が悪くなる様子が目に浮かびます」
アリシアに聞こえないくらいの小さな声で何やらごにょごにょと呟いたかと思うと、大きくため息を吐いた。