第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 ごくりと唾を飲み込んでロベルトの反応をうかがう。

  ロベルトは少し脱力するように笑った。



「ああ、美味い。気に入ったよ」



 その言葉に、アリシアは口元が緩むのを感じる。



(勝った……!)



 喜びに思わず、下でこっそりガッツポーズをする。



「しかし、兄上はいつもこうやってお茶をのんでいるわけか」



 ロベルトは何かをじっと考えるように、しばらく黙ってお茶を飲んでいたが、やがてティーカップを置いて立ち上がった。



「馳走になったな」


「あ、はい!気に入っていただけたようで何より……」



 アリシアが言い終わらないうちに、ロベルトは流れるように滑らかな動作でアリシアの右手を取った。

 あまりに自然な動きだったので、アリシアも咄嗟に反応できなかった。



「それでは、また」



 アリシアの手の甲にそっとキスをしたロベルトは、顔を上げてにっこりと笑う。


 アリシアはキッと目を剥き右手をかばった。



「ロベルト殿下!先ほども申しましたが、わたしは貴方の兄の婚約者ですよ!?そういう軽率な行動は避けてください!」


「何、ほんの挨拶ではないか。このくらいで兄上も怒ったりしない」


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