第一王子に、転生令嬢のハーブティーを
ロベルトはアリシアの目を見据えて言う。いつもと違う軽くない雰囲気に少したじろぐ。
辛い何かを堪えている、そんな表情をしているように見えた。
「ロベルト殿下……?」
「だがまあ、不快な思いをさせたならすまない」
ロベルトはその辛そうな表情を崩さないまま、踵を返した。
「何か、様子がおかしかったわね」
ロベルトの後ろ姿を見送りながら、アリシアは近くにいたミハイルに言う。
「まあ、ロベルト王子にも色々あるのですよ」
ミハイルは苦笑いしてティーセットを片付け始める。
「それにしても、エルダーフラワーがマスカットの風味に似ているとよく思いつきましたね。以前から不思議だったのですが、アリシア様のハーブやお茶に関する知識は全て独学なのですか?」
「まあハーブは独学の部分も多いけど、お茶なんかについては、ちゃんと教えてくれた人もいるの」
アリシアはその人のことを思い出し、微笑みをこぼす。
(今度、久しぶりに会いに行ってみよう)