第一王子に、転生令嬢のハーブティーを


 華やかなはずの伯爵令嬢が、こうして平民のふりをして街を歩いていることを揶揄しているのだろう。

 本当に、いったいどこで彼女にアリシアの正体がバレたのだろうか。

 アリシアはこっそりため息をつくしかなかった。




「そんなことよりリリーさん。こんな不思議なお茶、どこで手に入れたんですか?」



 あからさまに話をそらしたが、リリーは気にすることなく答える。



「輸入市です。海辺で月2回開催されている」


「え、知らないわ」


「つい最近始まりましたからね〜。ちょうど今日やってますから覗いてみたらどうですか?」



 魅力的な提案だ。こんなに珍しくて面白いものがあるのなら、他にも良いものが見つかるかもしれない。



「行ってみたいです!」


「ぜひぜひ〜!人が多いのでそれだけ気を付けてくださいね」





 店内にぼちぼちと客の姿が見受けられるようになってきたため、アリシアはそっと席を立つ。

 お代はいらないと言われたが、工芸茶は恐らくなかなかの値が張るものであろうと思い、色々と教えてくれた授業代も含めて幾らか置いてCafe:Lilyを後にした。



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