第一王子に、転生令嬢のハーブティーを



「おおー」



 リリーに教えられた通り海沿いへ行くと、輸入市は多くの人で賑わっていた。この活気ある風景は見ているだけでも楽しい。


 大きく息を吸い込むと、優しい潮の香りが鼻腔をくすぐる。



「うわ、こんなお菓子初めて見たわ!こっちは何かしら……」



 街にも輸入品を扱う店はあるが、品数が桁違いだ。

 独特な香りのする珍しい焼き菓子や、異国情緒あふれる洋服の数々。この国にはない不思議な色をした宝石のアクセサリーや小物。


 アリシアには見るもの全てが目新しく映る。

 試しに焼き菓子を一つ買って食べてみると、スパイスの刺激が舌を突く。刺激的ではあるが、癖になりそうな味だ。



(これは、楽しいわね……)



 中にはドライハーブを売っている店もあった。

 いつも行く店では少量で高い輸入品のハーブも、ここではずいぶんと安い。

 そしてふとその隣の店に目をやると、見覚えのある工芸茶が売られている。



(イルヴィス殿下に喜ばれるかも。いくつか買っておこう)



 想像した通り、値段はそこそこする。リリーにちゃんとお金を払っておいて良かった。

 自分用にもたくさん欲しかったが、手持ちがそう多くはない。他に欲しい物があったときのためを思って、買うのは5つだけにしておいた。


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