蘇りのウタ
今はこういう先入観は捨てた方がいい。


真琴は彼等によって生贄にされたんだ。


その事実から目を背ければ、きっと次は自分が生贄にされる番になる。


幸弘を疑うのは胸が張り裂けてしまいそうなほど辛かったけれど、仕方のないことだった。


「知らないフリをして、どうするの?」


あたしの代わりに菜摘がそう聞いた。


「あいつらがどう出るかを観察する。もし俺たちまで生贄にしようとしたら、その時は……」


そこで和希は言葉を切った。


ジッと前方を見つめている。


そちらへ視線を向けてみると幸弘たちの後ろ姿が見えた。


幸弘の姿を見た瞬間、真琴の姿を思い出してあたしは強く首を振った。


「俺はあいつらと戦う」


和希は小さな声でそう言い、歩みを進めたのだった。
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