蘇りのウタ
「みんなの足手まといになってるし、ここに置いていってくれていいよ」


乃愛の言葉にあたしは目を見開いた。


自分からそんな事を言い出すなんて思っていなかった。


幸弘の背中にくっついている乃愛を見る。


嘘をついているのかどうか、よくわからない。


「バカな事言うな」


幸弘は怒ったようにそう言い、歩みを進める。


もしここで乃愛を置く事ができれば、あたしの望み通りだ。


乃愛はここで死に、幸弘は1人になる。


あたしに振り向いてくれるかどうかはわからないけれど、乃愛という天敵はいなくなるのだ。


「もうすぐだから、頑張れ」


カケルが幸弘へ向けて励ましの声をかける。


だけど、きっとみんな考えているはずだ。


怪我をしてしまった乃愛を生贄にして、その間に森から出ることを。


そして乃愛本人もそれでいいと言っているのだ。


その事を考えながら、あたしは歩みを進めたのだった。

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