蘇りのウタ
途端に吐き気が襲って来た。


その場によろめき乃愛から離れる。


あぁ、俺は最低な人間だ。


俺は乃愛の事を心から愛していたはずだ。


それなのに、こんな状態になった乃愛を抱きしめる事ができないなんて。


「救急車を呼べ! 警察もだ!」


集まって来たやじうまたちが出来事に気が付いて叫んでいる。


それもどこか他人事のように感じられた。


ただ吐き気がする。


立っている事ができなくなって、俺は膝をついて口に手を当てた。


乃愛の視線が俺を追いかけているように感じられた。


視線をそらそうとしたけれど、できなかった。


ついさっきまで手を繋いでいた乃愛は、一瞬の間に車に撥ねられ、そして帰らぬ人となったのだった。
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