蘇りのウタ
「香菜美は休憩してろよ」


「手伝う。あの2人を見てるのも嫌だし」


そう言い、足元を眺めながら創吾と2人で歩く。


時々小枝や太めの枝を広いながら、洞窟が見えている範囲で移動する。


こうして創吾と2人でなにかするのは初めてのことかもしれない。


「ねぇ、創吾」


「なんだ?」


「創吾はどうしてあたしを殺さないの?」


あたしの言葉に創吾は動きを止めて、あたしを見つめた。


手が伸びて来て、あたしの頬を優しく撫でた。


それは幸弘のものじゃなかったけれど、暖かさを感じた。


「好きな女を殺したいと思うか?」


その言葉が風に乗って森中に響き渡ったような気がした。


「……好きな……女?」
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