蘇りのウタ
☆☆☆

当時の出来事を思い出したあたしは大きなため息を吐き出した。


儀式が本物だと知っていたあたしは、危険だとわかっていながらわざと歌詞を間違えたんだ。


こんなに近くに、あたしを思ってくれていた創吾がいることにも、気が付かずに……。


「好きな人を失う事は辛いことだ。香菜美が死んだ時と同じ気持ちを幸弘がしているんだと思うと、儀式の事を話さずにはいられなかった。結果的にそれが香菜美を苦しめる事になったんだ」


「そんなことない。全部、あたしが悪いの」


あたしのせいで、真琴も菜摘も和希もカケルも死んでしまった。


まだ犠牲者が出るかもしれない。


「香菜美……」


創吾があたしの手を握りしめる。


その目はとても切なくて、胸がギュッと苦しくなった。


その感覚にあたしは嬉しくなった。


やっと、幸弘以外の男の人に胸が動かされることができたのだ。

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