蘇りのウタ
「だから、もう1度会えてよかった。気持ちを伝える事も、やっとできた」


ついに、香菜美の目から涙が流れた。


頬を伝い、地面に落ちる。


「この森で死ぬのは乃愛じゃない。きっと、あたしなんだよ」


香菜美はそう言い、乃愛の手を握りしめた。


乃愛がイヤイヤと左右に首を振る。


香菜美が何をする気なのか、すでに理解できていた。


「最初からこうしておくべきだった。ごめんねみんな、巻き込んじゃって」


そう言って香菜美が取り出したのは小さなナイフだった。


小屋の中にでもあったのだろう。


「香菜美!! やめろ!!」


創吾が叫び声を上げてかけてくる。


その後ろからは複数の骨人間たちが迫ってきていた。


咄嗟に逃げる準備をする。


けれど、香菜美はほほ笑んでいた。


「もう、逃げなくても大丈夫だから」


そう言うと、ナイフを自分の首に押し当てた。


「香菜美!!!」


香菜美は創吾へ顔を向けて「ありがとう、創吾」と呟くように言うと、ナイフを持つ手に力を込めて、一気に引いたのだった……。

< 239 / 245 >

この作品をシェア

pagetop