蘇りのウタ
儀式自体は存在した。


だけど誰も蘇ってはいないのかもしれない。


その事実が重たくのしかかって来る。


ここまで来たのに乃愛が蘇ることがなかったらどうすればいい?


ここまで付き合って来た友人たちに、なんと謝罪すればいい?


いや、それよりなにより……。


おれはこれから先、どうやって生きて行けばいいんだ?


俺はそっと土の上に乃愛を下した。


乃愛の体は随分と硬直が進んでいる。


俺は乃愛の体をさすった。


そうすることで硬直が解けるとでも言うかのように、優しく、何度もさすった。


「これは俺の勝手な仮説だけど」


創吾がブロックに腰をかけてそう言った。


「もしかしたら、本当に蘇った人間はいるのかもしれない」


風が吹き、木々がざわめいた。


空はまだオレンジ色で、この大きな広間にはその光が届いてきていた。
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