蘇りのウタ
☆☆☆

足早に戻って来た広間には誰もいなかった。


乃愛の遺体だけはそこに横たわっていたけれど、見張り役だった和希の姿が見えない。


男子の中では和希は1人だけ儀式に反対していた。


もしかして1人で逃げてしまったんだろうかと思ったが、その考えはすぐに消えた。


創吾がいなければ車まで戻る事だって難しいだろう。


きっと、トイレかどこかへ行ったんだ。


それなら好都合だ。


あたしは小枝をブロックの輪の中へ投げ込むと、森の入り口で見つけた大き目の石を両手に持った。


儀式の為には、集めた血を乃愛の口に含ませることが必要になる。


それならば、口に含ませることができなければいいんだ。


あたしはそう考えたんだ。


幸いなことに今ここには誰もいない。
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