蘇りのウタ
それにつられるようにしてみんなが走って来た。


「乃愛はどうなったんだ?」


創吾の言葉に俺は混乱した。


「乃愛が、なに?」


そう聞いた瞬間、鋭い痛みが頭を貫いた。


まるで五寸釘を脳の奥深くまで打ち込まれたような痛みに、唸り声を上げてベンチに座り込んだ。


頭を抱えて顔を顰めていると、乃愛が車に跳ね飛ばされるシーンが蘇って来た。


繋いでいた手が一瞬にして離される。


真っ青な空に血しぶきが舞う。


乃愛の体は無抵抗だった。


なに1つできることなんてなかった。


跳ね飛ばされた乃愛の体は高く舞い上がり、そしてコンクリートに打ちつけられたんだ。


あの時の乃愛の視線を思い出し、小さく悲鳴を上げた。


「幸弘!」


香菜美が俺の背中を強くさすってくれる。
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