蘇りのウタ
俺は大きく呼吸を繰り返し、《手術中》のランプを見た。


思い出した。


今、乃愛はこの中にいるんだ。


この中で、懸命に生きようとしているんだ。


「乃愛……乃愛が……」


体中が震えていた。


あんなことが現実に起こっただなんて、信じられなかった。


乃愛の180度曲がってしまった首を思い出す。


あの状態で生きているなんて考えられない。


乃愛は即死だったんじゃないか?


そんな考えが過り、俺は強く頭をふってその考えを打ち消した。


その時、《手術中》のランプが消えた。


乃愛の両親がドアの前へと移動する。


手術時間はどれくらいだったんだろう?


乃愛が事故にあってからの記憶がないからわからない。


何時間もこうしていたような気もするが、ほんの数分だった気もする。


俺は誰かに聞いた医療の話を思い出していた。
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