蘇りのウタ
みんながいなければ、乃愛はこうして目を覚ます事はなかったんだから。


「眠たいけど、全然眠れなさそう」


残った灰に水をかけ、車へと移動している最中に真琴がそう言った。


真琴は蘇った乃愛をマジマジと見つめて、そして大きく息を吐き出した。


現実を、まだ受け入れられていない様子だ。


みんな真琴と同じ様子だった。


起きているのに夢を見ているような、そんな不思議な感覚。


俺自身もちょっと油断したら現実なのか夢なのかわからなくなってしまいそうになる。


だから、乃愛の手をきつく握りしめた。


これは夢じゃない。


乃愛はここにいる。


生きて、俺と一緒にいる。


手の平から伝わって来る温もりに何度もそう感じられた。


1時間かけて車が停まっている場所まで戻って来ると、車の上には落ち葉が積もっていた。
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