身代わりの姫
厩舎から山の方に走らせると、森になり、少し奥にキレイな池がある。
その池の畔に小さな小屋と馬を繋ぐ小さな馬小屋があった。
訓練で使うこともあるが、その時以外は誰でも使って良い場所だった。
東には王宮の塀があり、裏の森は王宮と隣合っている敷地。
あの塀の向こうには、リリアが住んでいるのか、と少し眺めた。
池の横に馬を繋ぎ、池の縁に二人で並んで座った。
「良い天気ね」
「そうだな」
シリルが答えながら寝転んだのを見て、同じように仰向けになり、空をみた。
真っ青な空に少しだけある雲の白さが際立つ。
その雲を見ながら言った。
「今日ね……」
「アリアの誕生日だろ?」
「知ってたの?」
特に祝うことはなく、毎年レオからプレゼントをもらう。
それは、養成所にいる全員が同じだった。
だからこそ、知っていたことに驚いた。
「ああ。何年も一緒にいるし………アリアだから……な」
え?
と思わず起き上がった。
アリアだから?
シリルも起き上がった。
「俺はアリアが好きだ。
仲間だからってだけでなく、女として好きだ」
シリルを見ると、真剣だけど少し照れたような表情で私を見ていた。
「……うん……私も好き」
明らかにホッとした表情になったシリルが私の肩を抱いた。
そのシリルの胸に、頭をもたれかけた。