身代わりの姫
案内されたのは、国賓館の最上階の3階にある部屋だった。
部屋には侍女も誰もいない。
初めてのジルベールとの夜、なのだ。
テーブルやソファーがあり、その部屋の壁にドアがある。
そこを開けたジルベールが言った。
「中はベッドルームになっている。
中に着替えがあるから、着替えてほしい」
ベッドのサイドの机に服が畳んである。
オフホワイトの長いワンピースに白いガウン。
ガウンの刺繍がキレイなバラの花であり、私のために誂えたのだと分かった。
着替えて、着ていたドレスをかけていると、ノックをして、水色の部屋着に着替えたジルベールが入ってきた。
「着替えは済んだのか?」
「この服も?」
「ちょっと見繕っただけだ」
「フフ……ありがとう、とてもキレイですわ」
ずっと思っていたことを、言ってみようと決めた。
「リリア・リオアーナ・サリ・シュリベルト。
私の本名です。二人の時だけでかまいませんので、サリと呼んでいただきたいのです」
リリアとアリアに共通した名前。
私自身を呼んでほしかった。
「サリ………俺のことは、人前でもジルと呼べばいい」
「えぇ?……そういうわけには……」
「呼び名など、気にしなくて良い。
お前の口が俺を呼べば嬉しいのだ」
腕を引かれて、抱きしめられた。
急にドキドキと体が騒ぎ出す。