身代わりの姫
夕方、歩いて王宮に行くと、護衛隊や侍女たちが脇に並び、シュリベルト国王、王妃、王太子が、ホールの一番奥で待っていた。
拍手の中、ジルの横を、一歩下がって白のシンプルなドレスで歩いていると
「里帰りは、歓迎されているんだな」
と私を見て言ったジルに笑顔で頷いた。
王の前で一礼すると王が、ようこそ、とジルと握手をして、私を軽く抱きしめた。
王とジルと王太子が並んであるき始めた後ろを、王妃と歩いた。
「なんだか寂しくなるわ。
あら、指輪をしてくれているのね?」
「ええ、せっかくですから」
よく似合ってるわ、と王妃が嬉しそうに言って、つけてきて良かった、と微笑んだ。
会食が行われる部屋へ行くと、テーブルにはすでにナイフなどがセットしてあり、給仕が食前酒を注いだ。
私はジルの隣で、向かいは王妃である。
王が、バルテモン国のことを色々聞きながら、食事が進んだ。
食後のお茶を飲んでいるとき、後ろの側近にジルが合図をすると、側近が箱を載せた盆のようなものを持ってジルの横に立った。
「これは、バルテモン国王家から、個人的なプレゼントです。
友好の証に……」
シュリベルト国王と王太子には、宝石の入った万年筆、王妃には宝石の入ったイヤリングだった。
「ありがとうございます、あなたのお母様のフィアナとは気が合って、時折お手紙を交換しています。
明るくて気さくな方ですわね。
リリアのこと、よろしくお願いしますね、ジルベール王子」
「お任せください」
「万年筆に宝石か……ありがとう、さすがバルテモン国だな」
「いえ、心ばかりの品です。
同じ王太子として、今後ともよろしくお願いします」
「素晴らしいな。ありがとう、国王にもよろしく伝えてくれ」
「はい」
和やかな雰囲気が、明日にはこの国を離れるということを忘れさせた。