身代わりの姫
港では、以前見た、黒い大きな船にデッキが降りていて、赤いリボンで手摺が装飾されている。
私達一行が着くと、先に来ていた兄である王太子がタラップのところで待っていた。
「お日柄も良く、良い船旅になりそうだな?」
「天気もこの結婚を祝福しているようだ」
ハハハ、と笑い合う王太子の二人の横で、シリルの強い視線に一瞬笑顔が消えたが目を閉じて、その後、兄をみた。
「姫を頼むな、ジルベール」
「分かってるよ」
握手をして肩を叩きあう2人が離れた。
「また、会えるから………」
兄に軽く抱きしめられて、頷いた。
では、というジルの声に兄とその護衛隊に一礼して手を振った。