身代わりの姫
上の船室に戻り、しばらくするとノックされてジルがドアを開けた。
「おう、待っていたぞ。リリア、船長のチロと副船長のカロンだ」
そばに行き
「リリアです」
笑顔で言うと、頭を下げた船長が
「チロと息子のカロンです。
リリア妃殿下の出発に立ち会えて、光栄です」
と挨拶を受けた。
「到着まで頼むな」
ジルの言葉に一礼して去って行った。
「到着までまだかかる。何か食べるか?」
「いえ、遠慮なく召しあがってください。
ちょっと外に出てみようかな?」
そう言って、さっきのテラスに出ると、風が気持ち良かった。
見渡す限り、海の緑色。
方向も分からず、恐怖が襲った。