身代わりの姫


「楽しそうだな」

ジルの言葉に椅子からバッと立ち上がったボンとコゼットが頭を下げて、おやすみなさい、と出ていった。


「侍女と話していたのか?」

「ええ、まあ………暇でしたので」

「ちょっと風呂に行ってくる、待っていろよ?」

頷いて、ジルを見送った。



はじめに出て行く時は、寝て良いと言ったのに、今は待ってろって勝手だわ、と思い、ベッドに横になった。




そのまま、眠ったらしく、朝陽で目がさめると、隣にジルがいた。


起き上がると、ジルが腰に手を回した。


「おはようございます」


「もう、起きるのか?」


「まだ早いですわ、おやすみなさい」


そう言うと、また眠りについたらしいジルを置いて、着替えてテラスに出た。


朝の空気は、寒いが心地よく、動物の鳴き声がした。



コゼットは休暇で街に行くと言った。

私には休暇で自由に街を歩くことはない。


影武者がほしい、初めてそう想った。






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