身代わりの姫
「気持ち良かったわ、ジル、ありがとう」
「いや、楽しかったら良い。
今度は城外も行ってみるか?」
「是非」
気持ち良い、と地面に寝転んで空をみた。
シリルと馬で走ったことを、思い出した。
あの時のアリアは、もう、いないのに……
時間が分からない。
でも、空はさっきより明るい。
馬のところに行き、手綱をとって、小川の水を飲ませた。
「戻りましょうか」
「そうだな」
厩舎に戻ると、お馬番と呼ばれる担当者に馬を渡した。
「殿下も妃殿下も、朝から驚かさないで下さいよ」
泣き言のように言われ、申し訳ない気持ちになったが
「気にするな、また来るけど愛想はいらん」
ジルがそう言って厩舎を出て、東の館に戻り朝食をいただいた。