身代わりの姫


「気持ち良かったわ、ジル、ありがとう」


「いや、楽しかったら良い。

今度は城外も行ってみるか?」


「是非」

気持ち良い、と地面に寝転んで空をみた。


シリルと馬で走ったことを、思い出した。


あの時のアリアは、もう、いないのに……


時間が分からない。

でも、空はさっきより明るい。


馬のところに行き、手綱をとって、小川の水を飲ませた。


「戻りましょうか」 

「そうだな」


厩舎に戻ると、お馬番と呼ばれる担当者に馬を渡した。




「殿下も妃殿下も、朝から驚かさないで下さいよ」

泣き言のように言われ、申し訳ない気持ちになったが

「気にするな、また来るけど愛想はいらん」


ジルがそう言って厩舎を出て、東の館に戻り朝食をいただいた。




< 132 / 279 >

この作品をシェア

pagetop