身代わりの姫


明け方、目が覚めると、寝室を出た。


ガチャ、とドアが開き、ジルが入ってきた。


「起きてたのか?」

「いえ、今起きたのよ、おはようございます。
お疲れ様ですわね」


着替えを、手伝ってベッドへ行くジルに付いていった。


「まだ、早朝ですわ、おやすみなさい」

布団をかけると手首を握られた。


「寝ないのか?」

「馬と走ってきます」


「………寝ないのか?」


真剣なジルの目に胸が、何故か痛んだ。


「………おやすみなさい」


握られた腕を離して、寝室を、出た。





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