身代わりの姫
東屋では、この城の西側の奥に兵士の訓練所があることや更に奥には農園もあるらしいことを教わった。
また、この前抜けた柵は、兵士が港へ直接行くためのもののようだった。
海の方には研修所や軍事工場、山は鉱山が色々とあり、民の病院や学校も整備されているらしい。
士官学校がジルと同じだったと、ガストンがジルの学生の頃の話をしてくれた。
「フルー様って?」
思わず聞いていた。
「簡単に言うと、王太子に片想いってとこです。
側室に立候補してるんじゃないですか?」
ボンが答えた。
「ずっと仲良かったの?」
そう聞くと
「仲が良いと言うか、先代の王は、たくさん側室を作ってまして、子供が多いのです。
その子供の子供が同じ世代に多く、小さいころはよくみんなで遊んでいたそうです。
王太子もさすがに親戚には手をお出しにならないですから、王太子が女性として見ているとは思えません」
「ちょっと、ガストン!」
慌ててボンが言ったが、しっかりと聞こえた。
「親戚には手を出さない?
じゃあ、親戚でない人と?ってこと?」
急に慌てた表情になったガストンが私の顔を見て話しだした。
「いえ、まあ………王太子も若い時がありまして……
正式にお付き合いとまではいきませんが、まあ………
いえ、かなり誠実な方なのです。
婚約された頃からは、そういうことは全くございません」
「………」
「………」
「あの、私、余計なことを申し上げた……?」
チラッとボンを見ながらガストンがおずおずと言った。
必死に庇おうとする話し方から、力が抜けた話し方になるガストンにプっと吹き出した。
「フフフフ、ガストン大丈夫よ、問題ないわ。
まあ、私に嫌がらせをするような人がいれば、やっつけるわ」
「まあ、リリア様。
王太子をギャフンと言わせるには、中央の館に籠城することですね。
お怪我をさせてはいけません」
剣を振ることを知っているボンが、心配そうに言った。
「それもそうね」
と、3人で笑った。