身代わりの姫
しばらくすると、バタバタと足音が聞こえ、ボンが入って来て、荷物を渡された。
「今からお出かけになる、と………」
え?
と言うと、ジルが入って来た。
「行くぞ」
と手首を引っ張られた。
「行くってどこへ?」
何も言わず、私を子供のように抱き上げて階段を降りて行く。
「ちょっと、ジル?歩けるから、下ろして」
下ろしてもらえずそのまま外へ出て、馬車に乗り込むと馬車が走り出した。
「ジル?」
怒っているように見える。
「お前が………笑っていたから………」
「………そりゃ笑うし怒るし……そんなこともあるわ?
一体どこへ向かってるの?」
肩を抱かれて、キスをされた。
熱いキスに、心が温まる。
それは………ジルに初めて抱いた思いだった。